NaYのブログ

怪文書の倉庫

閃の軌跡を3作プレイして①  1改「Thors Military Academy 1204」 2改「Erebonian Civil War」 感想

 

 

はじめに

 閃の軌跡1、2がps4にリマスターされたことをきっかけに、ここ数ヶ月で1から3までを続けてプレイした。(今年の9月に出る完結編の4に向けての復習も兼ねて)

 それぞれすでに1週クリア済みで、1、2が一周あたり50時間弱、3が100時間強かかっているので、今まで合わせて400時間ほど費やしていることになる。(改めて数字にすると自分でも驚く)

 普段、自分の周囲にはこのシリーズについて語れる人間がおらず、一人妄想に明け暮れており、それで満足していた。

 しかし、去年の秋に3を初めてクリアした時に自身のゲーム歴の中でも屈指の衝撃を受けたこと、もうじき軌跡シリーズそのものが一区切りを迎えることもあって、ここで自分の中に渦巻くものを整理すべくこうして記事にすることにした。

 長くなったので、3とキャラ語りは別の記事に分けます。

 

 かなり自己満足成分高め。

 

 以下、ネタバレは全開です。

 

 

 

 

 

「閃」以前の軌跡シリーズ

 軌跡シリーズは、日本ファルコムが出している、RPGのシリーズ名称であり、ゼムリア大陸という架空の大陸を舞台にしている。

 

以下、各作品概要 

 

空の軌跡FC」、「空の軌跡SC」、「空の軌跡3rd」  リベール王国編

 リベール王国を舞台に、新米遊撃士(請負人のようなもの)の少女・エステルとその義弟ヨシュアが、一人前になるべく旅をしながら、王国にうごめく陰謀を暴いていく

 

零の軌跡」「碧の軌跡」  クロスベル自治州編

 空の軌跡から一年後の話。

 二つの宗主国を持ち、政治的基盤が脆弱なクロスベル自治州を舞台に、警察の新設部署に集められた若者たちが大都市の闇に立ち向かっていく

 

閃の軌跡1、2、3、4」  エレボニア帝国編

 1、2がクロスベル編と同時系列。

 大陸最大の軍事国家・エレボニア帝国の士官学院に新たに設立された、「7組」に集められたワケありの学生が互いを通じて、帝国の未来を模索していく

 

 シリーズの特徴として、初代から最新の8作目までが、キャラクターや設定の面において、密接にリンクしている。*1

 

 閃の軌跡の直前の「碧の軌跡」では、宗主国である帝国からの圧力に悩まされるクロスベル自治州に生きる人々が描かれていた。そのエンディングは、クロスベル自治州の行く末を示すと同時に、帝国編の激動の物語を予感させるものとなっていた。

 

 

 

 「閃の軌跡」 学生という切り口から描かれる帝国編

 

 以下は、閃の軌跡の公式サイトにあるプロローグの一部抜粋である。

──《エレボニア帝国》。

ゼムリア大陸西部において最大規模を誇るこの旧き大国では
近年、2つの勢力が台頭し、国内における緊張が高まりつつあった。

一つは《貴族派》──
大貴族を中心とし、自分たちの既得権益を守らんとする伝統的な保守勢力。

もう一つは《革新派》──
平民出身の「鉄血宰相」を中心とし、軍拡を推し進め、大貴族の既得権益を奪わんとする新興勢力。

両者の立場はどこまでも相容れず、その対立は水面下で深刻化し、
帝国各地で暗闘が繰り広げられるようになっていた──。

──《トールズ士官学院》においても、
貴族派の理事と革新派の理事が対立を深め、生徒たちに影響を与えていた。

あらゆる面で優遇され、また実力も兼ね備えた白い制服の貴族生徒たち。
優秀ながらも下に見られ、理不尽感を抱き続ける緑の制服の平民生徒たち。

そんな中、リィン・シュバルツァーは

トールズ士官学院への入学を果たし、気付く。

自分の着た制服が、貴族生徒や平民生徒の制服の色と違うことを。
少数ではあるが、同じ「深紅の制服」を着た生徒たちがいることを。


それが──波乱に満ちたリィンたち《VII組》の学院生活の幕開けだった。

 

f:id:naokialexyamaguchi:20180608021211j:plain

7組の生徒達 

  

 閃以前の軌跡シリーズにおいては、エレボニア帝国は、強大な軍事力を背景に周辺国・地域に緊張を強い、時に戦争を仕掛ける、典型的な「侵略国家」として描かれていた。

 しかし、帝国編ともいうべき、閃の軌跡の主要キャラは、士官学校に通う10代の学生であり、「学園物」として話が進む。

 一見、これらはチグハグな取り合わせに思えるが、プレイするに従い、帝国編を学生という観点から展開することの意義が見えてくる。

 

 主人公たちの所属する「7組」は、身分によってクラスの分かれる士官学院の中で、唯一、身分の垣根を越えて生徒が集められたクラスである。そして、集められた生徒9人(のちに二人増えて11人)の出自・身分は、そのまま帝国の縮図になっているのである。

 

 それは、単に、平民と貴族という分かりやすい図に留まらず、元傭兵や重工業メーカーの令嬢、遊牧民からの留学生など、多岐にわたっており、彼らの出自や人となりを掘り下げる中で、自然とエレボニア帝国という巨大な国の抱える問題や情勢が紐解かれていく。

 

 彼らは、学院生活や、帝国各地への実地演習、昏い復讐に燃えるテロリストとの戦いの中で、その異なる立場・思想ゆえに度々衝突しながら、互いに理解を深め、協力し、自分たちの明日を切り開くための道を模索する。

 その過程は、7組が帝国の縮図である以上、帝国という国の行く末と見事に重なっている。(この辺は3で彼らが社会人になって、それぞれの仕事に就いた時にも、改めて強く感じられた)

 そして、後半へ進みにつれ、7組は、大きな試練を乗り越えていき、分かちがたい絆を結んでいく。

 

 一方、士官学生が中心であることの意義も物語に組み込まれており、7組が実習で、最前線の要塞を訪れた際に、あまりにも巨大で、個人の役割がシステム化された「軍」という「力」を目の当たりにして、個人としての無力さを感じる場面は印象的だった。

 後述するようにこの「力」というテーマは閃の軌跡全体を通じて描かれるテーマとなっていく。

  

 終盤では、貴族連合と帝国の正規軍の内戦が始まり、戦火は士官学校にまで及ぶ。

 そして、主人公は、仲間を守るべく単身敵に挑むも、惨敗し、クラスメイト達が絶望的な足止めを引き受ける中、戦場から強制離脱させられたところで、EDを迎える。

 

 皮肉なのは、日常が失われてことで初めて、帝国への復讐者すらも含んでいた7組が、真の意味で帝国の縮図であったことが分かる点である。

 (逆説的だが)だからこそ、そのような人物までもを抱えた7組が、同じ空間で学び、一丸となって、一つのことを成し遂げた、というのがどれほど奇跡的であったか、と強く実感できるのである。

 そして、物語は帝国の内戦を描いた閃の軌跡2へと続いていく。

 

 

閃の軌跡2」 動き出すリィンの物語 

 

f:id:naokialexyamaguchi:20180608021927j:plain

 左: リィンのライバル兼悪友のクロウ  右: 主人公のリィン・シュヴァルツァー 

 

  1の直後から始まる「閃の軌跡2」は、主人公のリィン・シュヴァルツァーとその因縁のライバル・クロウを中心に進んでいく。

 今作のリィンは、学園の地下に眠っていた騎神(ロボット)・ヴァリマールのパイロットとして、帝国正規軍と貴族連合軍の内戦に巻き込まれていく。

  

 前半は故郷で再起した主人公が 、内戦真っ只中の帝国を巡りながら、7組の仲間と合流していく様子、後半では「第三の風」として内戦に介入しつつ、結社「身喰らう蛇」と戦いを繰り広げる様が描かれていた。

 

 

・動き出す主人公リィン・シュヴァルツァー の物語

 1では、主人公のリィンは、身分は貴族でありながら、実の親が不明である、という独特の生い立ちから、7組のクラスメイトの相談役・喧嘩の仲裁役としての役割が多く、彼自身が、自身の問題と向き合い、解決する、という部分はあまりなかった。

 しかし、今作では、騎神というロボットの乗り手として、7組の中心として、シュヴァルツァー家の長男として、あらゆる面でリィン自身に焦点を当てられている。

 

 同じ騎神のパイロットとしてライバルのクロウとの因縁に始まり、自身を養子にしてくれたシュヴァルツァー男爵家への感謝と負い目や、前作へのラストで仲間を護れなかった自分の不甲斐なさを嘆く部分であったりと、全編を通じて描かれている。

 

 中でも、話の折り返し地点となる幕間では、敵本拠地に捕らえられたリィンが脱出する様が描かれていて、胸が熱くなるイベントが目白押しだった。

 まず、敵幹部と一対一で個別に面談して、貴族連合に協力する彼らの背景を掘り下げ、前作から引っ張ったクロウの過去も回収される。

 その後、覚醒した主人公が敵幹部相手を突破しつつも、クロウとの一騎打ち。ピンチになったところで7組や協力者たちの助っ人がやってくる。

 

 中でも、リィンの覚醒のきっかけが、義妹のエリゼの想いを知ることで、いかに自分が人に支えられて生きていたかに気づく、ということなのもポイント。

 それまで、その特殊な生い立ちから進路に悩まされ、自身の持つ力に振り回され続けたリィンが、ようやく自らの迷いを晴らして戦う様は本当に爽快だった。

(まあ、その結果が2や3のエンディングだと考えると、複雑な気持ちになりますけど)

 

・個性的な学院生たちをフルに生かしたゲームとしての作り込み

 1の頃から7組以外の学生たちについても、丁寧にキャラ付けした上で、各クエストや日常会話で、それぞれの悩みや部活・恋愛に至るまで丁寧に描かれていており、2では帝国各地に散らばったそれらの士官学院生と合流していく。

 

 この際の、生徒に対応するクエストを達成→生徒が合流→拠点となっている飛行船の各種機能が解放、という流れは各生徒の個性が反映されており、彼らを単なるサブキャラに留まらず、同じ内戦を戦い抜く同胞と印象付けるものとしている。(多分この辺の仕組みは4でもやりそう)

 

・ある意味強烈な余韻を残すエンディング

 終章では、内戦の決着が描かれており、リィンも宿敵・クロウと決着をつける。

 そして、二人は決闘の末、和解するも、リィンの血路を開くためにクロウは自ら犠牲となってしまう。

 家族の仇への復讐も果たし終えたその死に様は安らかだったが、全ての戦いが終わった後、クロウに暗殺されたはずの宰相の子飼い「鉄血の子供達」の筆頭が正体を現し、復活したオズボーン宰相とともに内戦をコントロールしていたことを明かす。

 そして、オズボーン宰相は内戦の裏で進められていた、「幻熖計画」の強奪、そして、クロウが無駄死にしたことに対する怒りをあらわにするリィンに対し、自らが父であることを宣告したところでEDが流れる。

 それら一つ一つの事実が衝撃的でありながら、それらが間髪入れずに次々と明かされ、その結果として、クロウが無為な復讐に満足して無駄死にしたこと、リィンたちのこれまでの戦いの意味が全て黒幕の功績として「総取り」されたことなどが、EDが流れる中、じわじわと余韻として込み上げてくる感覚は、他では味わえない感覚だった。

 

 EDの後にも、外伝と後日譚があり、外伝では、前作の主人公を操作して、帝国政府の手先となったリィンと戦い、後日譚では、リィンと7組の仲間が士官学院を「卒業」して別れる様が描かれている。

 後日談においては、主人公たち7組だけでなく、共に内戦を戦った同級生や先輩たちも、それぞれの進路へと歩き出す様子が描かれており、作中でも1の始まりから、ちょうど季節が一巡したこともあって、「卒業」の雰囲気がよく描かれている。

 そして、その爽やかさと物悲しさを以って、本編の後味の悪さを絶妙に上塗りしてくれるものとなっていた。

 

 

 
  

 

*1:各地域の1作品目から新規で始められるような設計にはなっている